大阪地方裁判所 平成7年(わ)3390号 判決 1996年4月19日
裁判所書記官
星野充広
国籍
韓国
住居
大阪府東大阪市衣摺四丁目二七番二五号
会社役員
利川元洋こと徐元洋
一九四六年七月一〇日生
主文
被告人を懲役二年六月及び罰金八五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、大阪府東大阪市衣摺四丁目二七番二五号ほか二ケ所において、東和化成工業所の名称で照明器具用ソケット製造業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 別紙1の修正損益計算書記載のとおり、平成三年分の総所得金額が二億九八八二万七三九二円で、これに対する所得税額が一億四四二九万六〇〇〇円(別紙4の税額計算書参照)であるにもかかわらず、実際の所得金額には関係なく、ことさら過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成してその所得の一部を秘匿した上、平成四年三月四日、大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が一三七五万五〇〇〇円で、これに対する所得税額が二六二万八〇〇〇円(ただし、申告書は、誤って二四八万八〇〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙4の税額計算書記載のとおり、平成三年分の所得税一億三九二七万九五〇〇円(ただし、利川チエ子こと文季順名義の申告所得税額一九三万二三〇〇円及び利川元盛こと徐元盛名義の申告所得税額四五万六二〇〇円を控除)を免れた、
第二 別紙2の修正損益計算書記載のとおり、平成四年分の総所得金額が二億六四二八万二二〇七円で、これに対する所得税額一億二六九六万三五〇〇円(別紙5の税額計算書参照)であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成五年三月八日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が一三〇七万七〇〇〇円で、これに対する所得税額が二三〇万八八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙5の税額計算書記載のとおり、平成四年分の所得税一億二二六九万五三〇〇円(ただし、利川チエ子こと文季順名義の申告所得税額一四九万八二〇〇円及び利川元盛こと徐元盛名義の申告所得税額四六万一二〇〇円を控除)を免れた、
第三 別紙3の修正損益計算書記載のとおり、平成五年分の総所得金額が二億四六三七万五八六四円で、これに対する所得税額が一億一七〇六万二〇〇〇円(別紙6の税額計算書参照)であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成六年三月七日、前記東大阪税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が一五五二万六〇〇〇円で、これに対する所得税額が二五二万九六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定の申告期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙6の税額計算書記載のとおり、平成五年分の所得税一億一二四〇万一二〇〇円(ただし、利川チエ子こと文季順名義の申告所得税額一六二万〇六〇〇円及び利川元盛こと徐元盛名義の申告所得税額五一万〇六〇〇円を控除)を免れた。
(証拠)( )内の漢数字は、検察官証拠請求番号を示す。
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書
一 文季順、徐元盛、徐元善の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書(一七ないし三九、四一ないし七一、七四ないし七九)
一 大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面
判事第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の各証明書(四、七、一〇、一三)
判事第二、第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(八二)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の各証明書(五、八、一一)
一 大蔵事務官の各査察官調査書(七二、八〇、八三)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の各証明書(六、九、一二)
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書(七三、八一、八四)
(事実認定の補足説明)
検察官は、平成五年度の雑費について、一三六四万七九二二円であると主張するが、検察官請求の大蔵事務官作成の査察官調査書(七、七四、七五)によれば、一三六四万七九七二円であることが明らかであるので、検察官主張額に五〇円を上乗せして認定したものである。よって、平成五年度の総所得金額は、検察官主張額の二億四六三七万五九一四円から五〇円を差し引いた二億四六三七万五八六四円となる。
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、所得税法二三八条一項に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑の併科を選択し、かつ、情状によりそれぞれ同条二項を適用して、右の罰金額は、いずれもその免れた所得税の額に相当する金額以下とし、以上は、平成七年法律九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項を適用して判示各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役二年六月及び罰金八五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(出席検察官)室田源太郎
(出席弁護人)田中森一
(裁判官 田中正人)
別紙1
修正損益計算書
利川こと徐元洋
(総所得)
<省略>
(事業所得)
<省略>
(不動産所得)
<省略>
別紙2
修正損益計算書
利川こと徐元洋
(総所得)
<省略>
(事業所得)
<省略>
(不動産所得)
<省略>
(総合長期譲渡所得)
<省略>
別紙3
修正損益計算書
利川こと徐元洋
(総所得)
<省略>
(事業所得)
<省略>
(不動産所得)
<省略>
(総合短期譲渡所得)
<省略>
別紙4
税額計算書
<省略>
別紙5
税額計算書
<省略>
別紙6
税額計算書
<省略>